SAPIX国際教育センターでは7月16日(日)、小5~中3の海外生・帰国生および保護者の方を対象に、「2023帰国入試進学フェア」をオンラインで開催しました。
本イベントでは、帰国生の積極的な受け入れを行っている八校の先生方をお招きし、教育方針や帰国生入試などについてご説明いただきました。海外生・帰国生の皆さんが知りたい情報を幅広く得られる絶好の機会とあって、日本国内のみならず、世界各地からもたくさんの方にご視聴いただきました。ここでは当日の講演内容をダイジェストでお伝えします。
中央大学杉並高校
入試広報副委員長 大舘 瑞城先生
高校生活とは「探究する冒険の旅」 目的を持って歩んでほしい
本校は所在地が東京都杉並区にあり、全校生徒数は約1000名、男女比はほぼ1対1です。中央大学の附属校で、90%以上の生徒が中央大学に進学します。中学校は設置していないので、全員が高校から入学することが特徴です。
本校は、高校生活とは何かを「探究する冒険の旅」だと考えています。自身の高校生活を、目的を持って歩む中で、失敗を重ねながらも、色んなことに挑戦してください。暗記学習だけでは探究的に学んだことになりません。中杉オリジナルのワークシート「探究マップ」を用いてアイデアを可視化・論理化したり、グラフ描画アプリを用いて自由に作図したりと、どの教科でも自主的・創造的に学んでいます。
授業や部活動以外の学びの機会を積極的に活用しているのも本校生徒の特色です。多様なコンテンツが用意されている土曜講座、中大との高大連携プログラム、有志で取り組んでいる模擬裁判、模擬国連、ビジネスコンテスト、ボランティアなどにも多くの生徒が参加します。また、10週間のターム留学(ニュージーランド)を始めとする海外研修も人気です。
総合探究の授業もあり、高1を例に挙げると、SDGsを軸としてフィールドワークを行います。高3になると、文系は卒業論文、理系は理数探究という形で、自分たちで成果物をまとめるということを行っています。
最近の帰国生入試は帰国後の受験割合が増加
受験形態については、以前は海外からの受験と帰国後の受験が半々程度でした。現在はコロナの影響もあり、帰国後の受験の割合が増えています。その内、学校種別は、日本人学校が半分を占めています。また、エリア比率は、中国とアジアが非常に多くを占めています。海外経験のある生徒の在籍数は例年約100名。クラスメイトの4~5名が帰国生となります。
募集人数は、一般公募推薦入試で130名、帰国生入試で20名、一般入試で150名です。帰国生入試への出願資格は、海外在留期間が1年以上であること、帰国後3年以内であることが必須条件となります(調査書の内容は参考程度)。
帰国生入試の時間配分は、国語・数学・英語が各30分です。点数配分は、基礎学力検査が150点(3教科×50点)、面接が40点です。
早稲田大学本庄高等学院
入試担当主任 髙井 寿文先生
専門的な授業を受けられる 多様性も尊重
早稲田大学の附属校である本校は、自由と多様性を重んじる校風の中、帰国生に限らず、国内外で様々な出自の方が在籍しています。受験がなく専門的な授業を受けることができ、施設や設備などが充実しているのが魅力です。
居住地域の内訳としては、埼玉県内から通っている方が約3分の2を占め、都内や神奈川からの通学者もいます。新幹線通学者も170名程います。また、生徒寮も完備されており、梓寮(女子)120名、早苗寮(男子)136名が入居可能です。空き部屋にも余裕がありますので、ぜひご入寮ください。
早稲田大学の13学部と同じ位置づけとして扱われる本校は、男女共学であり、全校生徒のうち海外出身者は一割程で、約130名が在籍しています。また、卒業生全員が、早稲田大学の各学部に進学しています。理系に関しては、ほぼ全ての志望者が第一希望で進むことが可能です。
大学入試がないため、普段の定期試験が入試に代わるものとなっています。そのため、不正行為については厳重に対処しています。
特色のある教育 国際交流も盛ん
特色のある教育を行っており、2年次までは共通の内容を学び3年次から文理選択をします。また、留学制度も準備されています。留学制度は、直近の成績に応じて同じ学年に戻ることができる「第2種留学」と、留学を含む4年間で卒業する「第1種留学」があります。また、2年次に「大久保山学」、3年次には学部進学を見据えた豊富な選択科目があり、探究型学習の集大成として全員が卒業論文を執筆します。
学院生活としては、水・土曜日は第4時限までとなっているのが特徴の一つです。放課後に課外講義や学校行事が入ることがあります。参加自由の公認団体活動も充実しています。
SSH・SGH指定校であった実績を活かし、様々な社会や地域とつながる研修・コンテストも多数開催しています。また、修学旅行は中国・韓国・台湾の3コースがあり、多数の学術交流協定校や訪日修学旅行生の受け入れ、生徒主導による学術交流など、国際交流も盛んです。
東京都立日比谷高校
統括校長 梅原 章司先生
知の日比谷でグローバルリーダーの育成を
日比谷高校の特色として、第一に「知の日比谷」があります。文武両道を目指し、理想の高い仲間と切磋琢磨することができます。次に、「グローバルリーダーの育成」が挙げられます。ハイレベルな英語をツールとして活用できることを目指しています。最後に、「学び続ける姿勢」の育成です。探究力の育成・幅広い教養を身に着けることを重視しています。
授業で重視していることは、「自分の頭で考える」「考えを自分の言葉で表現する」「他者の考えを聞く」「自分の考えを深める」ことです。生徒同士の対話を重視しているため、他の生徒から良い刺激を受けることができます。それだけに、授業への積極的な参加が求められ、毎日の予習・復習及び課題をこなしていくことで、全国トップクラスの学力を維持することに繋がっています。加えて、長期休業日や土曜には、講習を実施しています。また、放課後、委員会活動や部活などに取り組む生徒も多くいます。
5月中旬の体育大会、6月下旬の合唱祭、9月中旬の星陵祭(文化祭)、2年時3月中旬の修学旅行など行事も充実しています。
探究的活動が充実 海外交流も盛ん
本校は、GE-NET20の指定を東京都教育委員会から受けています。GE-NET20の中核となる取り組みが、グローバルリーダー研修です。世界的規模のSDGs課題に取り組む探究活動を通した人材育成を行います。探究の成果をニューヨークの研究所で発表する海外研修の他、官公庁や企業の訪問、大学等の研究者の講演など、様々な活動を行っています。GE-NET20指定校として、オンライン英会話やケンブリッジ英検受験などにも取り組んでいます。
また、文部科学省からSSHの指定も受けていて、次世代の国際社会を牽引する、高度なデータサイエンス能力を有する人材の育成を研究開発課題としています。現在は、文理関係なく、どのような進路に進んでも必要となるデータサイエンス能力の育成を目指し、新たな理数探究プログラムなどの開発を行っています。
なお、日本人学校等海外から直接本校を受検する生徒数はここ数年20人前後です。
中央大学附属高校
入試広報副委員長 堀口 勝裕先生
「自主・自治・自律」を重視 様々なプログラムも
中央大学附属高校は広大なキャンパスを持ち、体育館や野球場、人工芝グラウンドを保有しております。こうした設備が充実していることもあり、生徒の部活の加入率は90%以上を誇っています。また、日本一の規模である図書館は、20万冊もの蔵書数があり、理科の実験室も8教室完備されています。
特に大切にしている教育目標は、「自主・自治・自律」です。その場にふさわしいふるまいは何かを考えて、自主的に、自分たちで、しっかりと行動していく人間を育成していくことを目標としています。学習面で重視しているのは、生徒の好奇心を刺激することです。それに関する活動の一例として、高校の3年間で100冊本を読んでもらうという、課題図書を設けていることが挙げられます。初めは読書が苦手な生徒も、次第に習慣が身につきます。
理科の授業では、実験を中心として多彩な教育プログラム(過去の実施例:宇宙エレベータ、ロボットプログラミング、遺伝子組み換えなど)が用意されています。そして英語の授業も充実しており、高校卒業時の英検2級取得率は85~90%に上ります。
国際理解教育として、単位認定留学などの制度もあります。また、簿記講座をはじめとした特別講座も充実しています。最終的に、高校3年生の時には、1万字の卒業論文を書き上げることとなります。
本校の教養総合Ⅱの授業には、フィールドワークがあります。他の学校で言う修学旅行のような位置づけですが、内容は全く異なり、大学のゼミ活動に近いものです。研究チームごとに自分たちで行先などを考えて行動します。
8割以上の生徒が中央大学に進学
本校は基本的に大学受験に向けての勉強の必要はありませんので、大学受験に充てる時間を、将来の先取りに充てています。中央大学への進学は85%程度で、15%程度の学生は早慶上理・国公立大学に進学している状況が続いています。
2024年度の帰国生入試は試験日程が1月8日に変更され、試験科目は国語・英語・数学です。試験内容は筆記試験のみで、面接はありません。配点は3科目×100点です。
国際基督教大学(ICU)高校
教頭・帰国生徒教育センター長 松坂 文先生
帰国生と国内生が同じクラスで共に学ぶ
国際基督教大学(ICU)高等学校の目指す教育のメインテーマは、「新しい出会いと発見」、「世界平和への貢献」、「一人ひとりを大切にする教育」です。全校生徒数は720名、そのうち3分の2を帰国生が占めており、世界中から集まった帰国生と国内生が同じクラスで共に学び、経験を分かち合いながら3年間を過ごします。
なお、本校は少人数教育を実践しており、英・数・国をはじめとするさまざまな科目でレベル別の授業を行っています。そのため、生徒は自らの時間割を把握し、毎朝ホームルームから個々それぞれの授業へ向かっていきます。高2からは選択科目の幅が広がり、高3になると更に自由に自分の時間割を組むこととなります。それはおのずと、高校の3年間をかけて自らの人生をしっかりと考えながら学んでいくことに繋がります。
帰国生の資格認定
帰国生徒の資格は、保護者の勤務に帯同して、海外に継続して1年6か月以上在留し、帰国後5年以内であることです。中3の年度になりましたら、必ず本校ホームページより、資格認定の手続きを行ってください。
帰国生徒入試の合計定員は160名で、各入試の定員は推薦入試60名(書類審査と面接 ※出願条件有)、書類選考入試90名(書類審査と面接)、学力試験入試10名(英語・国語・数学+調査書)となります。帰国生としての資格が認められれば、すべての入試を受験できます。
東京都立西高校
統括校長 萩原 聡先生
文武二道を重んじる 授業で勝負がモットー
都立西高等学校は、予測困難な時代を生き抜き、豊かな知性・教養、健やかにして自律した個性をもつ、国際社会で活躍できる調和のとれた大きな器の人間の育成を目指して、様々な教育活動を行っています。
教育方針として「文武二道」があり、真剣な授業と豊かな教養である「文」と、活発な行事・部活動と課外活動への挑戦である「武」の二つを高いレベルで究めることを掲げています。また、「自主自律」も重んじており、学習指導から進路指導、生活指導、特別活動における指導と自発性のバランスをとっていくことを大切にしています。
学習指導では、「授業で勝負」をモットーにしています。与えられたものだけに取り組むのではなく、自分で考え、疑問を大切にする授業を重視しています。
進路指導では、まず自分の生き方を考え、その実現のための第一歩として大学進学を見据えることを大事にしています。オリジナルの「進路ノート」を活用し、希望する進路の実現について自ら考えを深めていけるよう、入学時から系統的・段階的な進路指導を行います。また、受験対策としては年2回校内で作成される「実力考査」と業者が作成した「模試」を活用します。生活指導では、自覚を促す指導、自律の基礎をつくる指導を行っています。
理数研究校に指定 オールイングリッシュの授業も
1・2年生は全員共通の幅広い科目を学ぶ必修型のカリキュラムで、3年生は進路に応じた文理選択を行い学びます。今年度は、文系を選択した生徒が140名、理系を選択した生徒が180名となり、ほぼ例年と同じ割合です。また、理系が社会系科目を、文系が理数系科目を自由選択して、受験対応しています。ほかにも特別講座や講習、補習などがあり、多様な学習ができる体制が整っています。
理数研究校に指定されており、野外実習なども充実しています。加えて、探究活動にも力を入れており、2年生全員が論文を作成し、校内発表会を行っています。
言語能力向上のための学習の一貫として、年間25冊の読書を3年間続ける指導や、授業で日本語や英語によるディベートを実施。また、海外派遣研修のほか、オールイングリッシュの授業やオンライン授業などの取り組みを通じて、英語4技能の向上を図っています。
なお、クラブ活動の加入率は180%以上で、兼部している生徒が多くいます。
東京学芸大学附属高校
帰国生・留学生委員会 瀬戸口 亜希先生
世界性の豊かな人間を育成する 探究活動が充実
東京学芸大附属高校は、世田谷区に校舎があります。8クラス×3学年と規模の大きい、国立の共学高校です。
教育方針は、「清純な気品の高い人間」「大樹のように大きく伸びる自主的な人間」「世界性の豊かな人間」の3つです。1954年の創立当時からこちらの3つの方針を掲げています。
全校生徒は953名です。各学年の帰国生の数は15名程度です。オランダ・中国・香港・シンガポール・ギリシャ・ザンビア・アメリカ・インド・タイなど、英語圏に限らず、様々な国出身の帰国生が在籍しています。
本校の特徴として、探究活動を高1から高2にかけて行っていきます。希望者ではなく全生徒が行っており、高2の授業では外部で各自が決めたテーマに1年間かけて取り組み、外部で成果を発表します。月1回土曜に授業が行われることがあり、その時間は探究活動に充てられます。他にもプレゼンテーションやディスカッション、レポート、理科の実験などの活動型の授業を多く実施しています。
高3から文理分け 多種多様な学校行事も
本校の授業は、高2まではすべて必修科目、文理選択はありません。高2の夏に科目選択説明会が開催され、夏休み期間中に自分が文系か理系かを熟考します。そして、高3から選択科目を受講します。習熟度別にクラス分けはされておらず、帰国生として特別扱いをされることはありません。
学校行事も充実していて、主に高1を例に挙げると、5月にはクラスの親睦を深めるため遠足に行きます。6月には地理実習があり、東京の中心部を歩きます。そして、8クラスを4色に分けて競い合う体育祭が6月に開催されます。夏休みには、新潟の寮に宿泊する林間学校があります。9月には1年で一番大きい行事である辛夷祭があります。この他に野外実習や科学見学実習などがあります。
帰国生の方が受験する入試の検査教科は国語・数学・英語で配点は各教科100点満点です。また、受験資格は、保護者とともに海外に在留している期間が2年間以上あることです。
青山学院高等部
入試広報委員 帰国生入試担当 池田 敏先生
海外での経験を通して培った広い視野を期待
帰国生入試の受験生に期待することは、「海外での経験を通して培った広い視野」「公正にものごとをみる眼」「異なる文化を受け入れる柔軟さ」「積極的なコミュニケーションを進める能力」の4つです。
2024年度の募集人員は、男女合わせて25名です。昨年度までは30名募集しておりましたが、元々全校生徒の定員が420名でしたところを、20名減らして1クラス40名に絞りたいという方針に合わせて枠を狭めるに至りました。
合格者数は、60~70名程度になると思われます。入学者数は、現在の1年生35名、2年生33名、3年生38名となっています。選抜方法は、適性検査、面接、書類審査です。適性検査は、国語(古典を除く)・数学・英語(リスニングなし)の3科目。面接は、約15分間のグループ面接になります。
出願資格は、保護者の海外勤務により、海外在住期間が引き続き1年以上に渡り、現地校、インターナショナル校または全日制日本人学校に在籍していた者で、帰国後2年10ヶ月以内であることが条件となります。
ダイバーシティを大切に
入学後は、中等部からの内部進学生、推薦・一般入試の入学者との混合クラスになります。
1クラスあたりの帰国生入試の入学者数は2~3人程度と少なく思えますが、海外在住経験者は5~6人程度います。(小学校課程で海外にいた人など)また、初等部、中等部そして高等部へと進学する過程で、多くの生徒達がどこかで外部生の立場になった経験を持っていますので、外部生の心細さをよく理解しています。帰国生入試の入学者に話を聞いても、「内部生がすごく優しいです」と言っています。入学後に、ホームルームデーという催しがあり、その前までは多少心細そうにしていた帰国生も、ホームルームデーの後になれば誰がどこの出身かなどは関係なく、楽しそうに学校生活を送っています。
その他にも、国際交流員会が主催するオリエンテーション、グループ面談などを行い、帰国生のサポートを継続していきます。